2004年_19

シチリア西部での買付が一段落したのでモッタ村のフィリッポ一家の元へと向かいました。

神殿の町、セリヌンテからは一気に向かえない、ひたすら遠い・・・ので、
とりあえず北上してPalermo:パレルモで一泊してから高速バスに乗ります。
Pullman:プルマンと呼ばれる高速バスはシチリアの移動に無くてはならない交通手段です。
中でもパレルモとカターニアを結ぶ路線はシチリアでは最も大事な主要幹線として、
走るバスも時刻もキッチリ快適なのです。

パレルモの駅前をまたしても定刻通りに出発するという “シチリアでは奇跡に近い”
仕事振りを発揮したこのバスは快調に高速道路を滑るように進んでいきました。



おおっっ?!

と気がつくと何やら見たような迫力満点のSignora:スィニョーラ(淑女)が、
私の斜め前の席に座って携帯電話で喋りまくっているではないですか!
相も変らず、よーーーーーーー喋る!
しかも、またしても携帯2台を駆使して代わる代わる!!

ちなみに、スィニョーラの写真などは怖くて撮ることなどできませんでした。

このスィニョーラ、昨年も買付時にバスを利用した際に乗っていました。
あまりにも鮮烈な印象が植え付けられただけに記憶に残っていたのです。

考えてみれば、
・同じ路線
・同じ出発地
・同じ(ような)出発時刻
をスケジュールに組み込んで仕事をしている方なら、お目にかかる確立も
高いのかもしれません。
それに、座る席って自然と同じような場所を選んだりしますから。
というわけで、怖いもの見たさの如く“スィニョーラ”を垣間見ていたところ、

どおおおっっ??!!

と急ブレーキをかけるバス。
前方はハザードランプ点滅のオンパレードでした。
どうやらこれは incidenti:インチデンティ、事故のようです。

いやぁ、イタリアは凄いです。
5分も止まっていると皆さん飽き飽きするのでしょうか?
クルマを降りてタバコなんか吸っちゃったり・・・
クルマのドアも開けっ放し・・・
いくつものグループが出来て井戸端会議ばりの集団が。
と、先のスィニョーラ、バスの窓越し、隣に止まっているトラックの運ちゃんめがけて窓をバンバン!

「どないなっとんねん!」

とばかりに車内に響く怒号!
無線で連絡をとっていた運ちゃんも気おされたのか、丁寧に対応。
お陰で事故の状態が判りました。

「3台のクルマが玉突きしたらしく、そのうち1台がひっくり返って道路を
遮断しているらしい」

いやぁ、イタリアは凄いです。
すぐさま車内の皆さん、携帯取り出して電話しまくり!
皆、おんなじ事を声高に言い放ち、かくいう私もモッタ村のフィリッポ一家に連絡しました。
イタリア人にこそ携帯電話は必要なんでしょう。
で、バスは止む無く途中より一般道に降りて迂回をはじめました。
すでに出発から3時間を経過しようという頃、車内のある女性が
気分が悪いからとお手洗いを所望。
でも見知らぬ山道をひたすら迂回するバスの運転手は止まれない、の一点張り。

そこへ先のスィニョーラ

「運転してんのアンタなんだから、とっとと止まらんかぁ!!」

と運転手を怒鳴り散らし、結果、バスは止まりました。
迫力にビビッた私でしたが、同時にちょっと感動したので“小さな”声で

「Brava!:ブラーヴァ!(素晴らしい!)」

と言ったら、

「・・・でしょうが!」

とウインクするスィニョーラ。
なかなかにドラマだったりしたのです。

かくしてバスは2時間40分の行程を6時間30分もかけて到着。
モッタ村のフィリッポ一家の家に辿り着いたのはその1時間後。

お腹ペコペコだった私を待ち受けていたのはサンティーナ(お母さん)の
お手製トマトソース!


朝5時に起きて作ってくれた絶品トマトソースを味わいつつ、今日の出来事を
ゆっくりと話しながら少し落ち着きを取り戻したのでした。

続く。