2005年_13
B&B(ベッド&ブレックファスト)の朝は簡単で・・・
という風に紹介されている事が多いのですが、まぁ私のような2つ星の安宿ばかり泊まる客からすれば
十分以上なのでした(苦笑)

ゆ~~ったり、の~~んびりした朝を過ごし、塩のフィリッポの出迎えを待ちました。
彼にはトラパニの港まで送ってもらうようにお願いしていたのでした。
そこではファヴィニャーナからやってくるアントニオ・タンマーロと落ち会う約束をしていたのです。

今回はマグロの加工場があるBagheria:バゲリアという町に行く事にしていたのです。
ここでいろいろと見学し、他の商品についてもいろいろと話をしようと考えていました。

・・・が、です。
船着場に現れた彼はオレンジのパンツに派手なシャツ着て、
光ったネックレスに金縁のサングラス&髭面でした。

「こ、このおっさん、なんちゅうカッコしとんねん?!」

と思うが早いか

「おー、コウジ、よく来たな!時間がないんだ、早く乗れ!」

っと強引に乗せられた車はワゴン車で、何かいろんな人が乗ってました。

「あの~~??」

「あー、彼らは海洋学やってる研究者達だよ。つい一昨日、マッタンツァがあってなー!
 いやぁ、コウジも来るべきだったよ!
 そんでなー、彼らが地中海のマグロの生態調査をやってるんで、是非にと俺ン所に来たって訳なんだ。
 これから行くBagheria:バゲリアの工房でやるんだよ!いやぁ楽しみだぜ!!
 おー、そういや、先日FIGARO japonの取材が来たんで載るはずだから買っておくようにな!
 俺の商品はコウジのとこで買えるって宣伝しといたから!ガハハ!!」

まぁ、こんな調子でした。

Bagheria:バゲリアという町はパレルモの空港、プンタライジ空港の近くにあり、
そういえばこの辺りの高速を走っていたら、かのファルコーネ検事がマフィアに暗殺された場所だ
という看板が見えました。
高速を降り、海沿いの小さな港町といった風情の町にその工房がありました。

すでにマッタンツァで収穫されたマグロ達はトレーラーで到着していました。
さっきまで学生然とした風体の彼らも白衣に着替え、長靴履いた格好になると
途端に精悍な感じがしてきました。

次々と下ろされてきたマグロを並べて大きさ、重さを計りだしました。
今回のマッタンツァで採れた48頭のマグロは大小さまざまで、
小さいもので160cm、80Kg、大きいもので200cm、170Kgほどありました。
割合と小ぶりだったそうです。
ちなみに大きいものは300cm、400Kgもあるそうです。



まぁ、海に潜って見ると数値以上に大きく見えますから、こんなもん見たらそれだけでパニックになりそうです。
横たわるマグロの群れをして科学者達は鬼気爛々といった感じで興奮気味に仕事を進めていました。
時々こんな説明もしてくれました。



マグロって高速移動するときには脇のヒレを締めて抵抗を減らしたり、
尾びれ近くの水平のヒレで水平バランスを保ったり、
小さく並ぶ背ビレでは水の流れを感じる事が出来るそうです。
まるでF1か航空機のようですねぇ。

アントニオもどこが旨いとかそういう事は良く知っていますが、
こういう話はあまり知らなかったようで、子供みたいに喜んでいました。



・・・というわけで、ほとんど仕事にならず、研究者の作業だけを見つつ
時間を過ごす事になってしまったのです。
とほほ・・・

研究者達はさらに解剖に乗り出しました。
ここで筋肉や内臓をチェックしながら様々な情報を得るのだそうです。
例えば、マグロは5月~6月頃までは良く食べるのですが、その後の産卵の前2ヶ月は
何も食べずに過ごすのだ、とかいう事もわかると言っておりました。

シチリア沖、ファヴィニャーナがマグロ漁のメッカとされるのは、地中海を回遊するマグロの生態において、
このあたりにやってきた時に人間が食するのに最も良い状態であるからと言えます。
今回の収穫といえば、研究者達の見解からもそうした事が判ったという事位でした。

・・・なぜか?
私はその後しばらくしてこの場を立ち去っていたからでした。
解剖があちこちで行われ、内蔵を取り出している姿が随所に見受けられ、
血抜きしていたとはいえ、切り出してから常温で数時間も放っておいたマグロから
立ち上がる香り・・・いえ匂い&血に酔ってしまったのです。
どう考えても法医学者にはなれないだろう私はここで情けなくもギブアップ。

 ←だから写真も小さめ

「アントニオ、こ、今度またね」

って事で退散に近い感じでその場を後にしたのでした。

「悪いな、コウジ!あ、FIGARO japon、よろしくな!ci sentiamo,ciao!」

ってなもんです。

続く。