2012年_10

サンダニエーレ 訪問

今回の旅の一つの目的として、「サン・ダニエーレに行く。」という大きな柱がありました。

ありがたい事に、日本を出発する前にイタリア貿易振興会の方のお口添えで、
Consorzio Prosciutto di San Daniele:サンダニエーレハム協会の事前コンタクトを得て、
その案内で Prosciuttificio Principe:プリンチペ社(ピアッティで取り扱っているサン・ダニエーレ産生ハムの生産者)を
訪ねる事になったのです。


なんか、イタリア行きのいつものドタバタからすれば恐ろしくスムーズで、
ちょっと拍子抜けしそうなくらいに思っていました。


でもそこはイタリア。
やっぱり来ました、不都合の嵐!


朝からみっちり工場を見学、ハムの歴史や食べ方等々を試食を交えて・・・
などという当初の予定はどこかへ吹っ飛び、旅の途中だというのにあれこれ変更を余儀なくされ、
結局、何とか工場の操業終了後にとりあえず見せてもらうようにだけはなりました。

「あぁ、折角のサンダニエーレがぁぁぁ・・・・」

っと涙目になりそうでしたが、そこから救いがあるのがこれまたイタリア。

説明にあたってくれたのは工場長にあたる方でした。

折しも当日はサッカーのユーロ2000の準決勝・・・だったかな。
勢いづくイタリアの大事な試合だっただけに、案じている旨伝えたところ

「大丈夫、私、サッカー好きではないから問題なし!」っと即答。

うれしいじゃあないですか!
現場の人らしく、キチンとその場を治めていく姿勢が素敵です。

既にパルマのハム工場で何度も製造工程を見てはいるので、今回はその勘を頼りにパルマとの違いに注目してみました。

腿肉の元となる豚、その生育場所、使う塩の種類もほぼ同じといえるほど類似していますが、
見事なまでに味・香りが異なるのはやはり製造工程に何かしらの違いがあるのかも・・・などと思っていたのですが、
耳にし目にする要所要所もほとんど変わらない。

要となる salatura:サラトゥーラと呼ばれる、腿の切断部、つまり足の付け根に塩をする工程もポイントは同じです。

しかも大型の腿肉にできるだけ少量の塩、という最近の潮流も同じです。





また、どちらも現代の気候においては、乾燥工程を全て自然の風だけとする事は難しいようで、
エアコンディショニングの必要性を説いています。

いやぁ、ますますわからなくなった、というのが正直なところです。
ただ、書面ではなく、それが一つの事例だとしても実際に目にする事が出来たのは大きな成果とはいえますが・・・


それにしても、塩ひとつでこれほど美味しく、しかもヴァリエーションまで豊かに表現できるなんて、
本当に大したものだと改めて思います。

一通り見学を終えて会議室様の部屋に入ると、スグにスライスしたハムが皿に美しく並べられて出てきました。

そのまま、あるいはグリッシーニに巻いて味を見ながら、続く話に耳を傾けていましたが、
その中でもスライスの仕方についての話になり、やはり

「そりゃあ、“スライサーでしゅっと薄くスライス”したものを口に運んで、
 “sciogliere in bocca:口の中で溶ける”のを楽しむのが最高だ」

と強く言い切るあたりは、パルマで聞いたそれと全く同じであり、これがまさに現代イタリアでの
生ハムの潮流なんだろうと思いました。



最後に、いろいろな食べ方の載った本やサン・ダニエーレの歴史を記した本なども頂く事ができ、
何だかんだでそこそこに落ち着いた結果となりました。

この先、サン・ダニエーレにはきっとまた来る事があるだろうと思いつつ、工場を後にしました。



サン・ダニエーレの地を訪ねたのがこれだけだったら結構寂しい気もするところですが、
今回はこれにさらにオプションがついてきたのです。

日本にいる間に、知人に今回の工程を話したところ、サン・ダニエーレのあるFriuli Venezia Giuliaの州都である
Udine:ウーディネ出身のイタリア人を知っているとの事で紹介してもらいました。

実際に会ってみるととても感じの良い人で話しも弾み、実際にサン・ダニエーレを訪ねる日程など知らせると、


「おー、だったら私もその頃に里帰りしているので現地で会いましょう。でご飯食べたり、
 そうそう、Saurys:サウリスって村で美味しい生ハム作っているからそこにも行こう!」

なんて嬉しい事言ってくれるじゃないですか!

Saurys:サウリスには燻製の美味しい生ハムがある、とは昔本で見たことがあり、
うっすら記憶にあったのですが、今のこの時期にそれを目にする事が出来るなんてとてもありがたい事。

どこでどんな出会いがあって物事が進むかわからない、そんな醍醐味を感じつつの今回の旅です。

というわけで、その翌日、Saurisに向かいました。


続く。