イタリア買付道中記 2004 その12

「フィリッポ、ファヴィニャーナ島のアントニオのとこ、行きたい!」

殆ど子供のわがままのような私の意見を聞き入れてくれたドライトマトのフィリッポは実は私と同じ歳(38歳)。
早朝6時、エレクトリック・ツィオの家にに迎えにきてもらい、

「コウジ、amininni:アムニンニ!(レッツゴー!)」 

とばかりに出発した私達は、

・シチリアの東の端(カターニア)からシチリアのヘソ(エンナ)経由で
・一気に南下して神殿の町(アグリジェンド)まで出ると海沿いを走って
・アンチョビの有名処(シャッカ)にて用事を済まし、
・また内陸部北上を経てようやく西の端(トラパニ)まで辿り着きました。


ざっと500km!

でもスピードメーターは端まで使わないと気がすまない彼のお陰でファヴィニャーナ島では余裕で昼食を取れそうです。
エアコンがビシバシ効く快適なクルマとはいえ、なぜかダラダラかいた汗は“冷や汗”だったり(^^; 

トラパニからファヴィニャーナ島までは高速艇に乗ってほんの20分程度です。
近い,近い^^!

向かうは、この島で有名な海産物屋のオヤジ、アントニオ・タンマーロのお店です。
ドライトマトのフィリッポと彼は、それぞれの仕事を尊敬しあう間柄といったところです。
久しぶりに会ったという事もあり、

「じゃ、飯でも食うか?!」

という事で近くの定食屋へ行きました。

「オヤジ、今日何が旨い?」
「魚介のcouscousクスクスが旨い。」
「あっそ、じゃそれ。」 

という簡単な会話で決められた私の昼食(^^;

クスクスってもとは北アフリカの伝統料理ですが、

・セモリナ粉で作ったパスタで
・お米の半分くらいの大きさの粒です
・お湯でふやかすか蒸したりして柔らかくなったところで
・野菜や肉、魚介のスープをたっぷりかけて
・スプーンで豪快に食す

ような素朴な料理ですので、海向かいのシチリアの西側では良く家庭料理として出されています。

 

味付けも様々ですが、野菜の味濃い、魚介パワフルなシチリアですから、
たいてい美味なので一度トライしてみてはいかがでしょうか? 

魚介パワフルなファヴィニャーナ島で食べるクスクスですから

・程好くしっとりしたクスクスに
・魚介の旨みが凝縮されたブロード(スープ)がたっぷりと

かかっているだけで美味くないわけが・・・無いです(^^;

せっかくの美味しい昼食ではありましたが、

・良く喋る
・いえ、かなり喋る
・というより、喋ったら止まらない


フィリッポとアントニオを前にしていた私はそれに合わせるのに必死だったわけで、
ちょっと黙って食事に集中しようもんなら

「コウジ、どうした?何考えてる?!」 

という事になり、しぶしぶ話しに戻ったりすると今度は 

「コウジ、どうした?早く食べろ!」 

という事にもなり、困ったりしていたのでした(^^;
食事も何となく終わってしまい、話しつかれた頃、フィリッポは最終の高速艇でまた帰路につきました。 

「ありがとう、フィリッポ!君のお陰で充実した時間が過ごせたよ^^!」

「楽しかったよ、コウジ!じゃあな、ciao,ciao ※△◆○^^!」 

私が教えたスラングを気に入った彼はそれ(※△◆○)を連呼して去っていきました。

ところで、もうバカンスシーズンが始まり出した頃でしたので宿を取るのが結構大変でした。
というのも、ファヴィニャーナはバカンスを海で過ごしたい向きには格好の場所で、
何日も連泊するツーリスト向けに部屋を貸すホテルばかりなので、
私のようにふらっと一泊するだけの客は好まれなかったのです。 

ようやく取れたのは何と知り合いの人の家でした。
シーズン期間だけ間貸しをしているらしいとの話を聞いたので泊まれるだけでもありがたいと思って
テクテク歩いていくと、そこには小さな城がぽつんと一つ在りました。


「ええぇっ?castellino:カステッリーノ(小さい城の意)に泊まるの?」

続く。