イタリア買付道中記 2004 その18

Selinunte:セリヌンテ という村へ行きました。

シチリアの南西、オリーブオイルの産地として知られるCastelvetrano:カステルヴェトラノより
さらに10kmほど南下した海沿いの村。

シチリアに点在する3つの神殿の地として知られるこの場所は、

・Agrigento:アグリジェント
・Segesta:セジェスタ

に比べて現代の交通網から切り離されたような場所、シチリアの2大都市、パレルモやカターニアからも遠く不便。
しかも、美しい神殿や古代劇場を程度良く留め見る事が出来るこれら二つの場所と比べて、
セリヌンテにはほぼ残骸しか思えないような石がゴロゴロ・・・という始末。
でも、それゆえにロマンを掻き立てられるというか。

 

紀元前5世紀頃に建てられたと言われる神殿の数々・・・の残骸

 

力強いドーリス式の石柱は高さ10m程度でしょうか、一般的に6個程度に分割されたピースを
繋ぎ合わせてつくる柱ですから、ひとつのピースが小柄な私の身長くらいあるわけです。


柱の台座ともなるとさらに大きいわけで、ここに腰を下ろしてゆっくりと見下ろす地中海の向こうは
アフリカ・チュニジア。
束の間のタイムスリップ。
歴史教科書にもたびたび登場するカルタゴ(フェニキア)人の本拠地を目の前にした前線基地だったセリヌンテ。

目前は地中海、切り立った断崖、二つの河に挟まれ、自然の要塞としての条件を整えたこの街は広く繁栄したそうです。
風に帆を揺らし、海からやってきた人々は、高くそびえ立つ神殿群を目前にし、どんな風に感じたのでしょうか。

繁栄の後の支配、破壊。
18世紀になってようやく発掘され、現代においてもまだ神殿の正式な名前がつかず、
アルファベットで表記されるだけの神殿群。


わからない事が多いゆえに、いよいよ想像をかきたてるようなセリヌンテ。
シチリアの乾いた空気がとてもマッチする素敵な場所だと思います。

続く。