2005年_09

シチリアで出迎えてくれたのはトマトのフィリッポでした。

「お金盗まれたんだってなぁ(笑)クックックッ(大笑)」

新手の挨拶で笑い飛ばされて、何だか気が晴れたような・・・

スーツケースをトランクに放り込んで早々に彼の工房へ行きました。
2年越しに話を進めていた商品が出来ていたからです。

ドライトマトで始めたピアッティですから、トマトについてはやっぱりこだわりがあります。
そんなわけで、行くとこまで行ってみよう、という意思の元、彼を口説いていたのでした。
まるでトマトの味噌のようなシロモノです。

現在のシチリアでも若い人たちはもうその存在を知らないそうです。
時代の流れ、効率・・・とは対極に位置するようなものですから次第にすたれていったそうです。
とはいえ、それが良いものであればまた評価されるべきだと思っている店長としては
見過ごせないところでした。

タイプの違う2種類を目前にしての彼との1対1の試食の場です。
香りを嗅いではひと言、
ちょっと舐めてみてはひと言、
メモを取りつつ、感想を述べては、彼の説明を聞いて、またこれを書く。



そんな緊張を繰り返しての対峙は知力・体力の消耗が激しいのですが、
この緊張感こそが醍醐味です。
結果、2種類ともオーダーする事にしました。
実際に晴れてお披露目できるまではもう2ヶ月ほどかかりそうですので、楽しみにしていてくださいね!

夕食はエトナ山の麓の村、Nicolosi:ニコロースィという所にレストランが出来ているというので出向きました。
ここから友人宅がある村、Belpasso:ベルパッソが近いというのも理由のひとつでしたが、
何だか面白そうな雰囲気を醸し出している店でした。

古いCantina:カンティーナ(ワインの貯蔵庫)を改装したインテリアは、
Restauro:レスタウロ(修復)技術の高い、イタリアらしいセンスに満ち溢れていました。
Nicolosi:ニコロースィという村はエトナ山麓の別荘地であり、
リッチな方々が多いのだそうです。

あちこちにスノッブの雰囲気が漂い・・・
あらら、何だか退廃のムード?
あれれ、アバンギャルドな格好の客層?!
おっと、ビシバシ決めたカメリエーレは何だか話し口調が・・・

「おい、フィリッポ!どうよ、このレストラン!」
「(笑)・・・なぁ。」

シチリアにこんな感じのレストランがあったなんて、と驚きつつ、
でも長旅と諸々の疲れがたまっていた私はそうそうに切り上げを嘆願し
友人宅に向かいました。

「Ciao,Koji come stai?」

友人宅では家族で出迎えてくれました。

「いやぁ、大変だったんだって?」
「ひどい顔してるじゃないか、疲れただろう」
「早く寝ないといけないな」
「ここは安全だからゆっくりとしなさい」
「ところで、どんな事があったんだ?」
「へぇ~、それでそれで??」
・・・というような会話を延々とする羽目になったのでした。

続く。