2008年_13

Modena:モデナへ迎えに来てくれたのはParma:パルマのパルミジャーノの生産者、
Nicola Bertinelli:ニコラ・ベルティネッリです。

彼の工房へは北村光世先生のツアーで訪ねたのが2005年。
その時のお話はコチラ

パルミジャーノの生産者でも最初から最後まで自分のところで全て
賄えるところというのはそれほど多いわけではないようですが、
彼らにはそれが出来るとても恵まれた環境にあります。

それだけでなく、パルミジャーノの原材料たる生乳をより良い
状態とするための工夫を重ねたものを世に出し始めたのがこの頃です。

パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズとしてD.O.Pの基準をクリアするのは
当然のことながら、さらに高級ラインとして“より栄養価の高いお乳”だけに限定し、
管理を厳しくしたものがMillesimato:ミッレジマートというヴァージョンです。

これについては、2007年秋に行われた松屋銀座本店での
イタリア展にて私がホール・カッティングをやらせて頂くという機会を経て
日本へのご紹介を見たのです。

その後、日本でもいくつかのインポーターの方々が日本に紹介するに至っています。

私としては、是非こうした良いチーズは“ホールから割りたて”をお届けしたい
と思ってはおりましたが、諸事情により踏み出せずにおりました。

まぁ何というか、恥ずかしながら資金が少ないとかストックスペースが無いとか、
そういう理由が大部分を占めたりなんかしておりまして・・・。

でも店舗化をまじめに検討している私としては、当然ながらそこがストックの場でもあり、
加工の場でもあります。
そうなればパルミジャーノ等もいくらかはストックできるようになるはずです。
いえ、そうします。

そうだ、そろそろもう一段上のステップを踏んでみよう!

そんな事もあってニコラにコンタクトを取ったのです。

忙しい合間を縫って(文字通り配達中でした)迎えに来てくれたニコラには
私も時間が無いことを告げていたので 、

「それならパルマに向かうまでの車中で話せばいいじゃないか。
パルマの駅近くには僕の店もあるからそこでささっと昼食もとれるから
無駄なく時間を使えるぞ。」

という事で、モデナに迎えに来てくれた際に、そそくさと車に飛び乗ったのです。
(ああぁ、それが後になって・・・)

高速道路を走ること40分、あれこれ、話した結果、

「なぁ~~んだ、コウジ、そんな(諸事情)事ならさっさと言ってくれれば良かったのに。
君がやろうとしている事に賛同するし、日本への輸出についても
いろんな知恵を働かせて問題なく届けよう。
君と僕には既に amicizia:アミチツィア、友情があるだろ?
君に売れない理由なんて何にもないさ!心配するな!」

っと嬉しい返事でした。

悶々と2年ほど考え込んでいたのは何だったのかと思うほど。
話してナンボのイタリアなのです。

で、ほどなくパルマの市街にあるショッピングセンターに到着しました。
彼の店舗が出展していて、そこではパルミジャーノはもちろん、
生ハムやサラミなどもあり、これらをパニーニにして、ワインも楽しめます。
上質な素材をシンプルに供した美味は生産者ならではの良さですね。

あわただしい日々を送っていた私には久々の美味しい昼食となり、
また先の会話に向けて相応の緊張を伴っていた私にとっては、
夢のような展開が食事を更に美味しくしたのは言うまでもありません。

「はぁ~、美味しかった。これで満足して日本に帰れるよ。
で、お土産があってね。
それはスーツケースに入れてあるから・・・

・・・って、スーツケースが無いっ!
・・・えええええええええぇぇ?!?!

どぅあぁ!!モデナに忘れてきた!」

真っ青になりました。
に、日本に帰れない。

い、いいか良く考えろ、とか何とか深呼吸したりなんかして。
と、とにかくモデナに帰るしかない。
で、電車はあるだろうか??

とにかくモデナのダヴィデに電話してみると、

「あ、あるなぁ。車のトランクルームにしっかり、ある。」

ニコラにあれこれ電車の時刻を確認してもらうと

「あ、あるぞ。一本だけ。モデナから乗れるぞ、それ。」

「い、急げ、ニコラ!、いや急いでくださいっ!」

という事で時計と睨めっこしながら高速道路をひた走りしてモデナに急ぎ戻りました。
ま、私は助手席であせっていただけなのですが。
駅にはダヴィデがスーツケースを持って待っていてくれました。
なんていい人たちばかりなんでしょう。

ぎ、ぎりぎりセーフ。
ニコラにお土産渡して、何とかお礼を述べ、電車に飛び乗りました。

たった一本しかない電車がまともに時間通りにミラノに到着するのか、
ミラノに着いたら着いたで読み通りの時間で空港に到着するのか、
もうそんな事は着いてみるまでわかりませんが、ただただ祈るばかりです。

最後の最後まで気をもみつつの旅なのでした。

次週は最終回となります。

続く。